【有澤家茶室】松江市北堀町278(明々庵)
前回に続き松江の武家屋敷。松江歴史館の外郭を飾る立派な武家建築は、当地にあった朝日千助邸(3,800石)の長屋です。松江藩で代々家老を務めた御家柄だけあって貫禄は十分。明治維新後は改変が加えられたようですが、歴史館建設に際して天保期(1830~1843)の姿に復元しており、2世帯の家来の住居と中間部屋で構成されています。
明々庵も家老屋敷の遺構。茶人大名として知られる藩主松平治郷(不昧)が、安永8年(1779)、家老有澤家(2,500石)のために有澤家邸内に建てた茶室です。建材は新しくなっていますが、構成は基本的に旧状通り。松江歴史館の『雲州松江の歴史をひもとく』には、広大な有澤邸の屋敷図面が紹介されており、築山を配した池の近くに、この茶室があることが確認できます。ちなみに有澤邸は朝日邸のお隣だったようです。
雲州松平家は越前家の支流とはいえ、18万石の大藩。家老クラスともなると知行高はかなりの高禄。前述の松江歴史館の本や『松江市史』別編1には、武家屋敷についても説明されており、松江藩の家老屋敷の威容も知ることができます。現在残るのは長屋と茶室のみですが、遠い昔の家老屋敷の姿が思い浮かぶような、そんな空気を感じました。
(2021年11月訪問)
朝日家長屋(松江市指定文化財)。「市報松江」(2007年3月)に復元整備前の写真が載っています。
松江歴史館敷地内から見た長屋の内側。
説明板にあった長屋の図面。フレームに収まっていませんが、右側には板の間の中間部屋があります。
写真中央に長屋玄関。右手が中間部屋。
玄関内部
長屋内部。左手はもう一つの玄関。屋根裏にもスペースがあって、写真奥の階段でつながっています。
明々庵(島根県指定有形文化財)。東京などに移築を繰り返した末、昭和41年(1966)に不昧公没後百五十年の記念事業で現在地に再建されています。