六十余州 武家屋敷紀行

~毎月第3土曜日更新~

vol.38 【讃岐国 多度津藩】京極家中の武家屋敷

 

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【富井邸】居住者:富井泰蔵(裏判本方/17俵4人扶持)

【浅見邸】居住者:浅見精之丞(小物成奉行/60俵)

【林邸】居住者:林求馬(家老/350俵)

 

 サンライズ瀬戸号が、観光振興のため琴平まで延長運転されるとの新聞記事を見つけ、思い立って車中1泊の讃岐旅行を計画。本来の終着高松には翌朝7時前に着いてしまいますが、行先延長となればゆっくりできます。東京出発後、ベッドで横になると、曲面の窓ガラス越しの夜空には満月。翌朝、瀬戸大橋から眺める瀬戸内海の島々も実に風光明媚。多度津までの非日常的な時間は、旅情をそそる感慨深いものでした。

 多度津丸亀藩京極家の分家が治めた1万石の陣屋町。少年の頃に愛読した『城郭と城下町』(小学館)には、立派な武家屋敷長屋門がいくつか掲載されていて、いつか行きたいと思っていたのですが、残念ながら今は長屋門の姿はなく、往時のまま屋敷が残っているのは富井邸(最上部写真)くらいのようでした。武家屋敷に想いを寄せる者として実に惜しい気がしますが、文化財維持にはコストもかかるので、なかなか難しいところです。

 富井家の幕末の当主泰蔵は、藩内では西洋砲術の第一人者として名を馳せたそうですが、彼が師事した家老の林良斎は、大塩平八郎と親交もあった陽明学の研究者。藩祖の母が林家の出で、以来代々家老職を務めた同家の屋敷遺構は、現在では蔵(最下部写真)だけのようですが、郊外の奥白方には別邸(町指定有形文化財)が残っているらしく、次回は是非見に行きたいところです。

http://www.town.tadotsu.kagawa.jp/itwinfo/i135/

(2015年10月訪問)

 

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屋敷がほぼ完全な形で残る富井邸(国指定有形文化財)。幕末の当主泰蔵は「泰蔵覚帳」など貴重な史料も多く残しています。

 

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 門構えの残る浅見邸跡。明治以降は多度津町長も輩出している由緒あるお宅です。現在は町立資料館になっており、多度津陣屋の模型なども展示されています。

 

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 家老林邸の蔵。平成3年刊行の『多度津町誌』に掲載された写真には、左手に長屋門が写っていますが、なくなってしまったようです。