六十余州 武家屋敷紀行

~隔月で第3土曜日に更新~

vol.100【筑前国 秋月藩】黒田家中の武家屋敷

【田代邸】
居住者:田代伊左衛門(馬廻組/150石)
所在地:福岡県朝倉市秋月180-1
文化財指定:朝倉市指定有形文化財
関連サイト:https://www.city.asakura.lg.jp/www/contents/1297665014824/index.html

【戸波邸】
居住者:戸波半九郎(馬廻組/300石)
所在地:同市秋月野鳥532

 

 私事ながら、昨年祖母が百歳の天寿を全う。一人暮らしの自宅にあった先祖の甲冑類は、福岡の博物館が寄贈を受け入れてくれることになり、海路・陸路を車で運び、無事に里帰りを果たしました(先祖は福岡藩士)。両親も立ち会いたいと同行し、福岡で一泊。翌日に空港まで両親を車で送った後、自分は秋月に行ってきました。我が家が仕えた福岡藩支藩である秋月黒田藩5万石の城下町です。

 秋月は6年ぶり。前回は久野邸をブログでも取り上げていますが(vol.62)、その時は閉館の16時に間に合わず行きそびれた田代邸が、今回の目的です。秋月藩家老の分家の屋敷で、ご子孫から寄贈を受けた市が平成21年(2009)に復元整備を終えて一般公開。現在の建物は改変・縮小もあるようですが、文化年間の建築と見られ、小京都と呼ばれるにふさわしい風景ともマッチして、200年の歴史の重みを感じさせてくれました。

 その後は、朝倉市秋月博物館へ。かつての秋月郷土館ですが、当時その入り口となっていたのが戸波邸長屋門。主屋も残り、外観だけ見学できます。家老も輩出した由緒ある家ですが、明治9年(1876)の士族反乱秋月の乱)に加わった戸波半九郎は、敗れた後に自刃。博物館には辞世の句が残されているそうです。葉室麟さんの『秋月記』、吉村昭さんの『最後の仇討』などに描かれる藩内抗争しかり、様々な禍根も残してきた秋月ですが、そんなことは想像もつかないような穏やかで風情ある街並。今回も気持ち良い散策ができました(この後に門司からカーフェリーで帰京)。

 さて、このブログを始めてから干支を一回り。ついに100回目の更新を迎えましたが、六十四州全国制覇はまだまだ。今後も武家屋敷探訪の旅を続けていきたいと思います。

(2023年12月訪問)

 

 

田代邸全景(裏手から撮影)

 

玄関左手の表座敷

 

表座敷の内部

 

屋敷裏手の土蔵

 

簡素な感じの門は当時のものか分かりませんが、土塀は歴史を感じさせ趣があります。

 

戸波邸の長屋門

 

戸波邸の主屋(内部は7部屋)。秋月の乱で戸波半九郎が自刃した後に、屋敷は旧藩主の黒田子爵家に譲られ、秋月の別邸として利用されたそうです。