六十余州 武家屋敷紀行

~隔月で第3土曜日に更新~

vol.76 【加賀国 金沢藩】前田家中の武家屋敷(陪臣)

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【居住者】平尾家(加賀藩陪臣/70石)

【所在地】石川県金沢市湯涌荒屋町35-1

文化財指定】金沢市指定有形文化財

 

 金沢湯湧江戸村に屋敷が移築現存する平尾家は、加賀八家筆頭の本多家の家臣。加賀藩では陪臣身分であり、前田家にとっては又家来ということになりますが、5万石の本多家にあっては、一般藩士と遜色ない暮らしぶりです。藩レベルの職制が本多家の中にもあるわけで、平尾家は家禄70石で代々近習頭や作事奉行などを務めていたそうです。

 万延元年(1860)の建築と伝えられる平尾邸。陪臣と言うと、武家屋敷の中の長屋住まいをイメージしてしまいますが、平尾家は武家屋敷として独立した一戸建て。雪国らしいアズマダチの主屋は、部屋数も多いです。かつての旧金沢江戸村(平成9年(1997)に閉鎖)にあったこのお屋敷は、現在の金沢湯湧江戸村での移築修理工事の末、昨年9月に一般公開がはじまったばかり。11月の金沢旅行は、タイミングばっちりでした。

 『金沢市史』(資料編17 建築・建設)を読んでみると、旧金沢江戸村にある武家屋敷遺構として(当時)、加賀藩藩医の江間家長屋門と、陪臣(本多家家臣)の林家長屋門も紹介されていました(第3章 武士住宅)。旧江戸村閉鎖後はどうなったのか、気になってネットで調べてみたところ、いずれも解体されて部材は現在の江戸村が保管しているようです。平尾家同様、いずれまた復元されて、往時の姿を見せてほしいものです。

(2019年11月訪問)

 

f:id:kan-emon1575:20191113094913j:plain玄関

 

f:id:kan-emon1575:20191113094949j:plain屋敷の図面

 

f:id:kan-emon1575:20191113095050j:plain座敷 

 

f:id:kan-emon1575:20191113095112j:plain玄関向かいの次の間。右手は居間、左手は中の間、その先には仏間。

 

f:id:kan-emon1575:20191113095227j:plain裏手から見た外観