六十余州 武家屋敷紀行

~隔月で第3土曜日に更新~

vol.53 【武蔵国】江戸の大名庭園

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六義園】(大和郡山藩柳沢家下屋敷
 所在地:東京都文京区本駒込6-16-3
 http://teien.tokyo-park.or.jp/contents/index031.html

芝離宮】(紀州藩徳川家下屋敷
 所在地:同港区海岸1-4-1
 http://teien.tokyo-park.or.jp/contents/index029.html

  

 地下鉄の駅で「六義園しだれ桜ライトアップ」のポスターを目にし、思い立って休日の夜に出かけてみました。六義園特別名勝)は、大老格として幕政に重きをなした柳沢吉保が、将軍徳川綱吉より拝領の当地に築いた回遊式築山泉水庭園。しだれ桜もさることながら、夜の庭園はなかなか趣があり(上部の写真)、見応えがありました。

 後日、もうひとつの大名庭園へ。小田原藩主大久保家の上屋敷を起源とする芝離宮(国指定名勝)。紀州藩芝屋敷として明治を迎え、宮内庁が買い取って離宮となっていますが、昭和天皇のご成婚を記念して当時の東京市に譲られ、一般に開放されています。近代的なビルを背景に、まさに都会のオアシスといった感じでした。

 余談ながら、NHKで放送していた「幕末グルメ ブシメシ!」の原作漫画(『勤番グルメ ブシメシ!』)に、芝離宮が出てきました。「明日は待ちに待った御庭見学。さぞや美しいのであろうな」と、嬉しそうに眠りにつく主人公の紀州藩酒井伴四郎。ところが翌日は暴風雨。勤番長屋に戻って、鮪のアラ炊きを肴に同僚と酒を飲みながら、「御庭見学は、ありがた迷惑だった!」と伴四郎。原作である本人の日記(『酒井伴四郎日記』)にも、そのくだりが実際に書き留めてられていましたが、なかなか率直な感想です。

 

 

f:id:kan-emon1575:20170325202112j:plain六義園のしだれ桜。満開ではありませんでしたが、美しく照らし出されていました。(以上、2017年3月訪問)

 

f:id:kan-emon1575:20170416142917j:plain後日、日中に再訪。しだれ桜は葉桜になっていました。

 

f:id:kan-emon1575:20170416153515j:plain旧芝離宮恩賜庭園酒井伴四郎の日記には、「甚だしく風雨に濡れながら拝見仕り候」、「今日の芝御庭拝見は有難めいわく、大につらき事にて腹も立ち、やけから酒三合呑み仕廻り、大に酔い伏し候」。残念でしたが、「此の上もなく絶景」との感想も。

 

f:id:kan-emon1575:20170416154025j:plain「大山」と名付けられた築山から庭園を見下ろす。小田原藩領だった大山にちなんだものではないでしょうか。「根府川山」もありました。(以上、2017年4月訪問)